賃貸物件の退去時に最もトラブルになりやすいのが「原状回復」に関する問題です。敷金がほとんど返ってこなかった、高額な修繕費用を請求されたという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、原状回復のルールと、退去時のトラブルを未然に防ぐための対策を解説します。
原状回復とは
原状回復とは、借主が退去する際に、借りた時の状態に戻す(原状に回復する)ことを指します。ただし、これは「新品の状態に戻す」ことではありません。
国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
つまり、通常の生活で生じる経年劣化(自然損耗)については、借主は費用を負担する必要がないのです。
貸主負担と借主負担の具体例
貸主が負担すべきもの(通常損耗・経年劣化)としては、壁紙の日焼けや変色、畳の日焼けや色褪せ、フローリングのワックス剥がれ、画鋲やピンの穴(通常の範囲)、家具の設置による床やカーペットのへこみ、テレビや冷蔵庫の後部の電気ヤケ(黒ずみ)などが挙げられます。
借主が負担すべきもの(故意・過失による損傷)としては、タバコのヤニ汚れや臭い、ペットによる柱や壁の傷、釘やネジの穴(大きなもの)、飲み物などをこぼしたまま放置してできたシミやカビ、掃除を怠ったことによるキッチンの油汚れやカビ、引越し作業でつけた傷などが挙げられます。
2020年民法改正のポイント
2020年4月の民法改正で、敷金と原状回復に関するルールが明文化されました。改正民法第621条では、通常損耗と経年劣化については借主に原状回復義務がないことが明記されています。
また、改正民法第622条の2では、敷金は「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に返還義務が生じることが規定されました。これにより、敷金の返還トラブルが法的にクリアになりました。
退去時のトラブルを防ぐ5つの対策
1つ目は、入居時に物件の状態を写真・動画で記録することです。壁、床、天井、水回り、設備など、できるだけ詳細に記録しておきましょう。日付入りの写真が最も有効です。
2つ目は、契約書の特約事項を事前に確認することです。特約によって借主の負担範囲が広がっている場合があります。「ハウスクリーニング費用は借主負担」などの特約は一般的ですが、内容が合理的な範囲内かどうか確認しましょう。
3つ目は、入居中の管理を怠らないことです。結露を放置してカビが発生した場合などは、借主の管理不足(善管注意義務違反)として費用負担を求められます。日頃から換気や清掃を心がけましょう。
4つ目は、退去立会いに必ず参加することです。退去時の立会いでは、貸主(または管理会社)と一緒に物件の状態を確認します。指摘された箇所について、入居前からあった損傷でないか、通常損耗に該当しないかをその場で確認・主張しましょう。
5つ目は、精算書の内容を細かくチェックすることです。退去後に届く精算書の各項目が妥当かどうか、ガイドラインと照らし合わせて確認しましょう。不当な請求があれば、根拠を示して交渉することが大切です。
トラブルが解決しない場合の相談先
原状回復に関するトラブルが貸主との話し合いで解決しない場合、以下の機関に相談できます。
消費生活センター(消費者ホットライン:局番なし188)では、無料で相談に乗ってもらえます。法テラス(法律支援センター)では、経済的に余裕のない方向けに無料の法律相談を受けられます。
少額訴訟制度を利用すれば、60万円以下の金銭の支払いを求める場合、原則1回の審理で判決が出るため、比較的簡便に裁判を行えます。
まとめ
原状回復のルールを正しく理解し、入居時からの対策を講じることで、退去時のトラブルを大幅に減らすことができます。特に入居時の写真記録と契約書の確認は、最も重要な対策です。
チョクイエでは、貸主と直接コミュニケーションが取れるため、入居前の物件状態の確認や退去条件の事前相談もスムーズに行えます。透明性の高い取引で、安心な賃貸生活を実現しましょう。
